数学基礎論

(すうがくきそろん、 22: foundations of mathematics)は、論理的および哲学的な数学の基礎を探求する[1]学問の一分野である。ただし、日本においては数理論理学[2][3][4] (mathematical logic) を指す言葉として用いられる。また、数学を用いた数学体系の研究である超数学 (メタ数学、metamathematics) を指す言葉として用いられることもある[5]。「論理を扱う数学の一分野」[5]、「基礎的な概念に十分に満足のいく数学的定義を与え, 現在も発展している数学の一分野である」とされている[6][注 1][注 2]

歴史

数学の哲学的・論理学的・アルゴリズム的な基礎に関する研究分野である。あるいは、広義には、数学の本性に関する哲学的理論の根底にあるものの数学的な探求であり、狭義には、数理論理学と同義で用いられることがある。他の数学の分野が整数実数図形・関数などを取り扱うのに対し、数学自体を対象とすることがある[要出典]。 数学は、発展するに従って自分自身をも厳格に定義する方向へと進み、多くの数学者論理学者がその夢に心血を注いだ。数学を論理学の上に基礎づける論理主義はフレーゲの独創的な仕事に始まる。

まず、その道具として集合が考えられた。集合にもとづいた数学の再整理は大きな成果を生み、こんにちの数学において集合は欠くべからざる道具となっている。しかし、無限集合の扱いなどの難しさなどが数学基礎論の議論の過程であきらかになっていった。そしてバートランド・ラッセルは、素朴な集合の取り扱いは「自分自身を要素としない集合全体の”集まり”」も集合と考えるが、左記の集合は、それ自身を要素としない時、その時に限り自身を要素とするという矛盾を引き起こすことをラッセルのパラドックスとして指摘した。

ラッセルは『数学原理』によってフレーゲの論理主義の問題点を解決するが、そこに用いられた公理はもはや論理的に自明とはいえず、本来の目的であった論理学に基づく数学の基礎づけに成功したとはいえない。[要出典]

ブラウワーは「直観主義」を唱えた。その結果は、排中律の使用を制限した直観主義論理という非古典論理として、論理学の世界を大きく広げた。

一方、ダフィット・ヒルベルトは、数学を「公理と推論法則」によるゲームとみなす「形式主義」の考え方に基づき、「有限の立場」により数学の無矛盾性を証明するによる「ヒルベルト・プログラム」を提唱した。ヒルベルト・プログラムは、ゲーデルの不完全性定理によって「自然数論を含む帰納的公理化可能な理論が無矛盾であれば、それ自身の無矛盾性証明が存在しない」ことが示されたため、理論の無矛盾性を証明するために、どのような理論が必要か、という観点での研究が大いに進むことになった。

その後、ポール・コーエンの強制法により、公理的集合論では選択公理一般連続体仮説などが、証明も反証もできない決定不能命題であることが示された。

いずれにしても、以上のような数学基礎論の発展自身によって、ブラウワーの時代の「数学の危機」といったような危惧・そのため数学に「基礎付け」が必要だ、という意識自体が歴史的なものとなった[要説明](1932年のノイマンの著書『量子力学の数学的基礎』のように、「基礎付け」という発想自体にある種の学術的ブームが当時あった)。

日本では、数学基礎論は、数学の基礎付け、それに用いられる数学の数学および数理論理学の意味で用いられる。

影響

数学を人間の精神活動から離れて、形式主義的にかつ有限の立場から検証しなおすことにより、計算機科学の基礎と発展に大きく寄与した。たとえば、今まで自明なものとして受け入れられていた多くの数論的関数を有限の立場から考察することにより、アルゴリズムの研究に直接の影響を与えた。プログラミング言語で必ず登場するデータ型の形式的宣言や論理構造、関数の概念は遠くは数学基礎論に由来する。数学基礎論で活躍したフォン・ノイマンチューリングが後に計算機科学において先駆的な役割を果たした。そのような意味で数学基礎論は単なる机上の空論ではなく、むしろコンピュータをインフラの一つとする現代社会の形成に多大な影響を与えた[要出典]

脚注

注釈

  1. ^ 以下、新井敏康の『数学基礎論:Mathematical Logic』(2021年)からの引用[2]
    数学基礎論 (Mathematical Logic, 数理論理学, 通称「基礎論」) [2]
    以下、菊池誠の『不完全性定理:The Incompleteness Theorems』(2014年)からの引用[3]

    「不安の時代」が通り過ぎた後, 数学基礎論は哲学と袂を分かち, 独自の数学的な問題意識や価値観を見出した. 数学基礎論の専門家は「哲学的な動機のもとで数学基礎論を語る時代は終わった」と考えるようになり, 哲学を連想させる「数学基礎論」という名称よりも, 「数理論理学」や「論理学」, ただし「数学」や「哲学」と対峙する「論理学」ではなく, 「代数学」や「幾何学」と並ぶ「論理学」という名称を好むようになった. 数字基礎論は普通の数学に生まれ変わった. [3]

  2. ^ 以下、『岩波 数学入門辞典』(2005年)からの引用[4]

    数学基礎論
     foundations of mathematics
     数理論理学超数学とほぼ同じ意味で,論理を扱う数学の一分野である. … ゲーデルの不完全性定理は有限の立場(形式主義)で数学の無矛盾性を証明することはできないことを示した.ゲンツェン(Gentzen)は,有限の立場より緩い制限のもとで自然数論の無矛盾性を証明した.
     数学基礎論は計算機科学〔コンピュータ科学〕とも密接に結びついている.[5]

    数理論理学
     mathematical logic
     数学の理論を展開する際にその骨格となる論理の構造を研究する分野をいう.数学基礎論とほぼ同義である.[7]

出典

  1. ^ Lambek, Joachim. “foundations of mathematics | History & Facts | Britannica” (英語). Encyclopedia Britannica. Encyclopædia Britannica, Inc.. 2022年7月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年9月25日閲覧。
  2. ^ a b c 新井 2021, p. iv.
  3. ^ a b c 菊池 2014, p. iii.
  4. ^ a b 青本 et al. 2005, p. 294, 297.
  5. ^ a b c 青本 et al. 2005, p. 294.
  6. ^ 新井 2021, p. ix.
  7. ^ 青本 et al. 2005, p. 297.

参考文献

  • 菊池, 誠 『不完全性定理:The Incompleteness Theorems』(初版1刷)共立出版、2014年10月25日。ISBN 978-4320110960。 

数学辞典

関連項目

数学基礎論の主要なトピックス
数理論理学
集合論
圏論
  • 型理論
  • トポス理論(英語版)
  • 圏論用語一覧(英語版)
  • 圏論話題一覧(英語版)
 
関連項目
学術的領域
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批判的思考非形式論理学
論理学の哲学
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